
「ヴィーガン」と「ベジタリアン」。どちらも耳にする言葉ですが、実はその意味や背景には大きな違いがあります。この記事では、それぞれの定義から食生活、健康、環境、倫理、文化、歴史まで、やさしい言葉で丁寧に解説していきます。
ヴィーガンとベジタリアンの基本的な違い
ヴィーガン(Vegan)
ヴィーガンは、単なる食生活の選択にとどまりません。肉、魚介類、卵、乳製品、蜂蜜といったあらゆる動物性食品を一切口にしないだけでなく、衣服や化粧品、娯楽など、日常生活のすべての面で動物由来のものを避けることを目指すライフスタイルです。その根底には、「動物の搾取をなくしたい」という深い倫理的な思いがあります。
ベジタリアン(Vegetarian)
ベジタリアンは、主に食事において「肉や魚など動物の命を奪う食品を食べない」人たちを指します。ヴィーガンと異なり、卵や乳製品を摂るかどうかで、さらに細かく分類されるのが特徴です。
🟢ヴィーガンのサブカテゴリー
- ロー・ヴィーガン(Raw Vegan):食品を約48度以下の低温で調理し、生のまま摂取します。酵素を大切にする考え方です。
- ホールフード・プラントベース(Whole Food Plant-Based):加工食品を避け、野菜、果物、豆類、穀物など、全体のままの植物性食品を中心とします。
🟢ベジタリアンのサブカテゴリー
- ラクト・オボ・ベジタリアン(Lacto-ovo vegetarian): 卵及び乳製品を食べるベジタリアン。最も一般的なタイプです。
- ラクト・ベジタリアン(Lacto vegetarian):乳製品を食べるベジタリアン(卵は食べない)
- オボ・ベジタリアン(Ovo vegetarian):卵を食べるベジタリアン(乳製品は食べない)
- オリエンタル・ベジタリアン(Oriental vegetarian): 五葷(葱・玉ねぎ・にんにく・ニラ・らっきょう)も避けるベジタリアン
- フルータリアン(Fruitarian):果実、ナッツ、種子といった植物の実と種(瓜類、果菜類も含む)のみを食べます。植物自体を傷つけないように収穫できるものに限られます。
- ペスコ・ベジタリアン(Pesco vegetarian)(定義としてはベジタリアンでは無い)・ペスカタリアン:魚介類は食べますが、肉(哺乳類や鳥類)は食べません。厳密にはベジタリアンとは少し異なりますが、動物の肉を避ける点では共通しています。
- フレキシタリアン(Semi-Vegetarian):普段は菜食中心ですが、時々、肉や魚介類も食べるという、柔軟な食生活を送る人々を指します。「セミ・ベジタリアン」とも呼ばれます。
食生活の違い
具体的に、ヴィーガンとベジタリアンの食卓にはどのような違いがあるのでしょうか。
ヴィーガンの食事
主要な食品:果物、野菜、豆類、穀物、ナッツ、種子、植物性ミルク(豆乳、アーモンドミルク)、植物性ヨーグルト、豆腐製品、代替肉(大豆ミートなど)。
ヴィーガン代替食品:プラントベースのミルクやチーズ、ヨーグルト、アイスクリームなど。
人気のレシピ:ヴィーガンカレー、ヴィーガンパスタ、ヴィーガンブッダボウルなど。
ベジタリアンの食事
主要な食品:ヴィーガンの主要な食品に加え、乳製品や卵も食卓に並びます。
ラクト・オボ・ベジタリアンの食生活例:
朝食:ギリシャヨーグルトとフルーツ、オートミールとミルク。
昼食:チーズサンドイッチ、野菜スープ。
夕食:パスタとトマトソース、野菜炒めと卵焼き。

栄養と健康:メリットと注意点
🟢ヴィーガンの栄養管理
ヴィーガン食は特定の栄養素を欠乏しがちですが、適切な知識と工夫で補うことができます。
- ビタミンB12:動物性食品に豊富に含まれるため、サプリメントや強化食品からの摂取が必須です。不足すると神経障害や貧血のリスクがあります。
- 鉄:植物性の鉄(非ヘム鉄)は吸収されにくいので、ビタミンCが豊富な食品と一緒に摂ると吸収が促進されます。豆類や緑の葉野菜に多く含まれます。
- カルシウム:牛乳を摂らない分、強化豆乳やアーモンド、ブロッコリーなどから意識的に摂取しましょう。強化豆乳やアーモンド、緑黄色野菜などから意識的に摂取します。
- オメガ3脂肪酸:亜麻仁油、チアシード、ヘンプシードなどからから摂取。DHAやEPAは植物性由来のサプリメントも有効です。
- ビタミンD:日光浴で生成されるほか、強化食品やサプリメントで補給できます。
メリット:飽和脂肪酸やコレステロールが少ないため、心血管疾患や糖尿病、肥満のリスクが低いとされています。食物繊維や抗酸化物質が豊富で、消化器系の健康維持にも役立ちます。
🟢ベジタリアンの栄養管理
ベジタリアンは乳製品や卵を摂るため、ヴィーガンに比べて栄養管理のハードルは下がりますが、それでも注意すべき点があります。
- ビタミンB12:ラクト・オボ・ベジタリアンであれば、卵や乳製品から摂取可能です。
- 鉄:植物性食品から摂取し、ビタミンCを一緒に摂ることで吸収率を高めます。
- カルシウム:乳製品が豊富な供給源となります。
- オメガ3脂肪酸:卵や亜麻仁油などから摂取できます。
メリット:肉食に比べて心血管疾患のリスクが低く、植物性食品の摂取量が多いことで消化器系の健康維持にもつながります。
環境への影響:地球にやさしい選択
食生活は、私たちの体だけでなく、地球環境にも大きな影響を与えます。
🟢ヴィーガンの環境影響
ヴィーガン食は、畜産業に由来する環境負荷を大幅に削減できます。
- 温室効果ガス排出:肉の生産、特に牛肉は大量のメタンガスを排出しますが、植物性食品は排出量が少ないです。
- 水使用量:1ポンドの牛肉生産には約1,800ガロン(約6,800リットル)の水が必要なのに対し、豆類は約400ガロン(約1,500リットル)で済みます。ヴィーガン食は水資源の節約に貢献します。
- 土地利用:植物性食品の生産は効率的で、森林伐採の抑制や生物多様性の保護に寄与します。
🟢ベジタリアンの環境影響
肉の消費を避けることで、温室効果ガスの排出量削減に貢献します。乳製品の生産には水が必要ですが、肉の生産に比べると使用量は少なくなります。
倫理的な側面:動物への思いやり
ヴィーガンやベジタリアンを選ぶ背景には、動物に対する倫理的な考え方があります。
ヴィーガンの倫理面
動物福祉:動物の搾取や虐待を避け、動物の権利を尊重します。動物実験や畜産業に反対し、クルエルティフリー(動物実験をしていない)製品を選ぶなど、生活全般で動物由来のものを避けます。
ベジタリアンの倫理面
動物福祉:動物の殺害を避けることで、動物の命を守ろうとします。乳製品や卵の生産における動物の扱いについては、個々の倫理観によって関心度が異なります。動物福祉に配慮した製品を選ぶベジタリアンも増えています。
文化と歴史:食の選択のルーツ
ヴィーガンやベジタリアンの考え方は、どのように広まってきたのでしょうか。
ヴィーガンの背景と歴史
起源と発展:1944年にイギリスで「ヴィーガン協会」が設立されたのが始まりです。創設者のドナルド・ワトソンが「ダイエタリー・ベジタリアン」から発展した概念として「ヴィーガン」を提唱しました。1960年代以降の動物の権利運動の高まりや、近年の環境問題への意識向上に伴い、世界中で急速に支持者を増やしています。ヴィーガン製品の市場も大きく成長しています。。
ベジタリアンの背景と歴史
起源と発展:その歴史は古く、古代インドやギリシャにまで遡ります。ヒンドゥー教や仏教、ジャイナ教などの宗教では、非暴力の教義に基づき、古くから菜食が奨励されてきました。
近代の運動:19世紀には、イギリスで「ベジタリアン協会」が設立され、近代的なベジタリアン運動が始まりました。健康志向や倫理観の高まりとともに、世界中で広がりを見せています。

実際の食生活例:ヴィーガンとベジタリアンの一日
具体的な献立を見て、イメージを膨らませてみましょう。
ヴィーガンの一日
朝食:オートミール(アーモンドミルク、バナナ、ベリー類、ナッツ)。
昼食:ヴィーガンサラダ(ケール、アボカド、ひよこ豆、トマト、キュウリ、ヒマワリの種)。
夕食:レンズ豆カレー(レンズ豆、ココナッツミルク、トマト、スパイス、ほうれん草、玄米)。
間食:フムスと野菜スティック、ナッツとドライフルーツのミックス。
ベジタリアンの一日(ラクト・オボ・ベジタリアンの場合)
朝食:ヨーグルト(ギリシャヨーグルト、グラノーラ、ベリー類)。
昼食:チーズサンドイッチ(全粒パン、チェダーチーズ、トマト、レタス)。
夕食:野菜炒め(ブロッコリー、ニンジン、ピーマン、豆腐)と卵焼き。
間食:チーズとクラッカー、ゆで卵。
実践に役立つ情報:知っておきたいポイント
🟢ヴィーガンの生活スタイル
製品選び:商品の成分表示を必ず確認し、ゼラチンやカゼイン、ラノリンなど、動物由来の成分が含まれていないかチェックします。
サプリメント:不足しがちなビタミンB12などのサプリメントを検討します。
料理の工夫:植物性食品を使ったレシピを積極的に取り入れ、彩り豊かでバランスの取れた食事を心がけます。
🟢ヴィーガンの生活スタイル
製品選び:商品の成分表示を必ず確認し、ゼラチンやカゼイン、ラノリンなど、動物由来の成分が含まれていないかチェックします。
サプリメント:不足しがちなビタミンB12などのサプリメントを検討します。
料理の工夫:植物性食品を使ったレシピを積極的に取り入れ、彩り豊かでバランスの取れた食事を心がけます。
🟢ヴィーガンの生活スタイル
製品選び:商品の成分表示を必ず確認し、ゼラチンやカゼイン、ラノリンなど、動物由来の成分が含まれていないかチェックします。
サプリメント:不足しがちなビタミンB12などのサプリメントを検討します。
料理の工夫:植物性食品を使ったレシピを積極的に取り入れ、彩り豊かでバランスの取れた食事を心がけます。
🟢ベジタリアンの生活スタイル
食品選び:動物の肉を避けつつ、乳製品や卵を使った料理を楽しむことができます。
栄養バランス:ビタミンB12やカルシウム、鉄の摂取を意識します。
料理の工夫:乳製品や卵も活用できるため、より幅広いレシピに挑戦できます。

生涯を教えてくれる「牛さん」のお話
これは昔話ではなく、現代に生きる「牛さん」たちの物語です。発展途上国のある地域では、牛と人間が特別な関係を築いています。ここでは、牛を「牛さん」と呼び、敬意を込めて接します。殺したり食べたりすることは決してありません。なぜなら、人々は牛さんの賢さ、律儀さ、優しさをよく知っているからです。
牛さんと人間の暮らし
この地域の農家では、牛さんが家族の一員として共に暮らしています。彼らは農作業を手伝い、その労をねぎらうかのように専用の家屋で休みます。しかし、与えられる草や藁だけでは体が持ちません。
驚くことに、牛さんの家屋にはロープも鍵も、出入り口に扉もありません。いつでも自由に外に出ることができます。逃げようと思えば、逃げることも可能です。
けれど、牛さんは決して逃げません。
それどころか、夜になると、自ら何キロも歩いて街へ向かい、ゴミ捨て場に残った野菜くずや果物の皮などを見つけては食べ、疲れるとその場で休みます。夜が明けると、また家主のもとへと戻ってくるのです。それでも、先進国で見る牛とは想像ができないほど、痩せています。
感謝と共生
雌の牛さんの場合には、家主が来ると、自らの意思でミルクを与えてくれます。安心して、子どもも産みます。
この繰り返しの中で、牛さんは人に殺されることなく、やがて寿命がきて、生涯を終えます。
この地域の村では、道を歩けば、自由に歩きまわる牛さんたちとすれ違います。道端で寝ている牛さんがいれば、村人たちはその横を静かにすり抜けて歩きます。邪魔にしたり、追い払ったりする人はいません。
牛さんたちは、人間に奉仕させられているわけではありません。自然と人との共生のなかで、お互いを思いやり生きています。
本来のベジタリアンのあり方
牛さんがミルクを「くれる」、それは搾り取られるのではなく、信頼と感謝の循環のなかにある贈り物です。
もし、私たちの社会でも、牛や他の動物たちに囲いや柵を設けず、自由に生きる権利を与えることができたなら、私たち人間は、彼らの命を奪うのではなく、彼らの方から与えられるものを、静かに、感謝とともに受け取ることができるはずです。
それこそが、本来の「ベジタリアン」のあり方なのかもしれません。

まとめ
現在の私たちの国における牛の扱いは、上記のお話とは大きく異なります。
ヴィーガンとベジタリアンの主な違いは、動物製品を避ける範囲にあります。ヴィーガンは、食生活だけでなく、ライフスタイル全般にわたって動物製品を一切避けることを目指し、倫理的、環境的、健康的な理由から動物製品を避けます。一方、ベジタリアンは、主に食生活において動物の肉を避けることに重点を置き、乳製品や卵を摂取する場合があります。
どちらの選択も、個々の価値観やニーズに基づいており、それぞれの利点と注意点を理解した上で、バランスの取れた食生活を維持することが重要です。
ヴィーガンとベジタリアンの生活スタイルは、それぞれの背景や文化、歴史に深く根ざしており、個々の選択が広範な影響を持つことを理解することが大切です。
この記事を通して、ヴィーガンとベジタリアンへの理解が深まったでしょうか? ご自身の食生活について考えるきっかけになれば幸いです。
日本と海外の文献では、ヴィーガンとベジタリアンの捉え方にどのような違いがあるのでしょうか。
日本の文献
日本の文献では、食材の制限に焦点を当てて説明されることが多いです。また、魚介類が食文化に深く根付いているため、「ペスコ・ベジタリアン」が言及されることもあります。
- ヴィーガン: 動物由来の製品を一切摂らない食生活として紹介され、倫理的・環境的背景が強調されます。まだ多数派ではないため、実践ガイドや背景説明が多く見られます。
- ベジタリアン: 主に健康志向やダイエットの一環として紹介され、「ラクト・オボ・ベジタリアン」が主流です。健康効果に関する研究が注目されます。
海外の文献
欧米を中心に、より広範囲なライフスタイルとして議論されます。倫理、環境保護、健康促進といった多角的な視点から論じられるのが特徴です。
- ヴィーガン: 単なる食生活を超え、動物の権利を重視するライフスタイルとして捉えられます。衣料品や化粧品など、生活全般で動物由来の製品を避けるアプローチが強調され、健康効果や環境へのポジティブな影響に関する研究も豊富です。
- ベジタリアン:複数の定義が存在し、健康効果(心血管疾患や肥満のリスク低減など)に関する研究が多く行われています。ヴィーガンとの倫理的・環境的な比較も頻繁に議論されます。