
「お肉はダメだけど、魚ならいいの?」
ヴィーガンについて、そんな疑問を持つ方は少なくありません。
結論から言うと、ヴィーガン(完全菜食主義)は魚を食べません。魚の身だけでなく、かつおだしや煮干しなどの魚介由来の出汁も避けます。
ヴィーガンは、動物を食料や資源として利用しない生き方です。
そのため、牛や豚、鶏だけでなく、魚やエビ、カニなどの魚介類も含めて食べません。
この記事では、ヴィーガンが魚を食べない理由を、倫理・歴史・環境・健康の4つの視点から解説します。
なぜヴィーガンは魚を食べないのか?
ヴィーガンは、動物を搾取・利用しないという考え方に基づいています。
そのため、陸上動物だけでなく、魚介類も「命ある動物」として尊重します。
対象となるのは、たとえば、
- 魚
- エビ・カニ
- イカ・タコ
- 貝類
などの魚介類すべてです。
つまり、ヴィーガンにとって魚は「肉とは別だからOK」という存在ではありません。
命を奪うことになる動物性食品として、はっきりと避ける対象です。
「魚は肉と違う」と感じる人が多い理由
日本では、魚は昔から身近な食材として扱われてきました。
そのため、「肉は食べないけれど魚ならいいのでは」と感じる人も少なくありません。
また、植物中心の食生活を送りながら魚を食べるペスカタリアンという食スタイルもあります。そのため、ヴィーガンと混同されやすい面もあります。
しかし、ヴィーガンの定義では、魚は明確にNGです。
動物倫理:魚も「痛み」を感じる生命
魚には有害刺激を感知する「傷害受容体(nociceptor)」が存在することが研究で確認されています1。
- 釣り針が口に刺さること。
- 網の中で逃げ場を失うこと。
- 水揚げされて呼吸できなくなること。
こうした状況は、魚にとって強いストレスや苦痛を伴う可能性があると考えられています。
ヴィーガンは、牛や豚だけでなく、魚もまた苦痛を感じる生命として尊重します。そのため、魚を食べることを避けるのです。
大量漁獲による圧迫、網の中でのパニック、痙攣、水揚げ時の窒息。これらは魚にとって明確な苦痛の兆候だと考えています。

「かつおだし」はヴィーガンNG?
和食に欠かせない「だし」ですが、魚由来のだしはヴィーガン食では使われません。
たとえば、次のような魚介だしをヴィーガンは使いません。
- かつおだし
- 煮干しだし
- あごだし
- 貝だし
ヴィーガンが使う植物性のだし
ヴィーガンは、次のような植物性のだしは使えます。
- 昆布だし
- 干し椎茸だし
- 野菜だし
- ベジブロス
実は、日本の伝統的な精進料理は、こうした植物性の旨味を活かした料理です。
動物性食材を使わなくても、深い味わいは十分に作れます。
日本の食文化と「魚」の意外な歴史
「日本人は昔から魚を食べてきた」と思われがちですが、魚が全国的に日常食として広がったのは、明治から戦後にかけてだと考えられています。
魚は腐敗しやすい食材であり、冷蔵技術や輸送手段が発達する以前は、地域によって利用状況に大きな差がありました。
魚の流通と食文化の変化
- 古代〜中世
魚は主に沿岸地域で消費され、内陸部では塩蔵や干物として限られた量が届く程度でした。 - 江戸時代
江戸や大坂など都市部では魚食文化が発展しましたが、多くの農村では依然として非日常的な食材でした。 - 明治以降
鉄道や製氷技術の発達により、魚が広い地域へ流通するようになります。 - 戦後
冷蔵・冷凍流通網の発展によって、魚は全国的な日常食として定着しました。
魚の流通と位置づけ(整理)
| 時代 | 魚の位置づけ | 普及の背景・技術 |
| 古代〜中世 | 沿岸部中心の利用 献上品 | 塩蔵、乾燥、発酵 |
| 江戸時代 | 都市文化(江戸・大坂) | 街道整備、近海漁業 |
| 明治〜戦前 | 全国普及の始まり | 鉄道網、製氷技術 |
| 戦後〜現代 | 全国的な日常食 | 冷蔵・冷凍流通 |
日本の食の基盤は植物性だった
日本の長期的な食生活を見た場合、魚介類が中心であったとは言えません。仏教文化の影響もあり、「殺生を避ける」という価値観が長く存在していました。
かつての日本の食生活は、米・大豆・野菜・海藻を基盤とした植物性中心のものでした。
- 主食:米・麦・雑穀
- たんぱく源:大豆・味噌・醤油
- 副食:野菜、山菜、海藻
「だし」は自然に滲み出るもの
「だし」についても、かつお節が当たり前になる以前は、野菜の煮汁や昆布、干し椎茸などから自然に滲み出る旨味が大切にされていました2。
環境問題と健康リスク
魚を食べない選択には、動物倫理だけでなく、環境や健康の面も関わっています。
海洋生態系への負荷
現代の漁業では、過剰漁獲が深刻化しています3。
さらに、イルカやウミガメなど、本来の対象ではない生き物まで巻き込んでしまう混獲も問題です。

汚染物質の蓄積
海洋プラスチックや有害物質は、食物連鎖を通して魚介類に蓄積されることがあります。とくに大型魚では、メチル水銀などの蓄積が懸念されています。

魚の栄養はどう補う?
「魚を食べないと栄養が足りなくなるのでは」と心配する方もいます。
しかし、魚に含まれるDHAやEPAは、もともと魚自身が作っているのではなく、魚が食べる藻類に由来しています。
ヴィーガンは、次のような食品から栄養を補うことができます。
- 海藻類
- 亜麻仁油
- クルミ
- 大豆製品
- 豆類
- 藻類由来のサプリメント
適切に食事を組み立てれば、植物性食品から必要な栄養を摂ることは可能です。
日本でも、妊娠中の人に対して大型魚の摂取量への注意が呼びかけられています4。
まとめ|魚を食べないことは、日本らしさを失うことではない
ヴィーガンという選択は、日本の食文化を否定するものではありません。
むしろ、殺生を避け、植物性の旨味を大切にしてきた精進料理や昔の日本の食卓の知恵を、現代の価値観の中で見つめ直したものとも言えるでしょう。
動物への共感。
環境への配慮。
そして、自分自身の健康。
魚を食べないという選択は、よりやさしい社会を考える一歩にもなるのです。
よくある質問(FAQ)
Q.ヴィーガンとベジタリアンの違いは?
A. ヴィーガンは、卵・乳製品・魚を含むすべての動物性食品を避けます。
ベジタリアンは、卵や乳製品を食べる人も含まれます。
Q.ヴィーガンでも和食は楽しめますか?
A. はい、楽しめます。
昆布だし、豆腐、納豆、野菜の煮物、精進料理など、日本にはヴィーガンに合う食材や料理がたくさんあります。
Q.ヴィーガンはかつおだしを使えますか?
A. 一般的に使いません。
かつおだしは魚から作られる動物性の出汁のため、ヴィーガンでは避けられます。代わりに、昆布だしや干し椎茸だし・野菜だしなどの植物性の出汁が使われます。
だしは、味噌汁・めんつゆ・煮物・おでん・和風だれなど、多くの和食に使われています。
そのため、日本でヴィーガンの食事を選ぶときは、魚そのものだけでなく、出汁の原材料にも注意が必要です。
ヴィーガンスタートのトップページへ⇒
- 痛覚と痛みの進化:魚類モデルからの証拠
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31544617/ ↩︎ - 第17回 日本のだし文化とうま味の発見(国立国会図書館 ミニ電子展示「本の万華鏡」)
https://www.ndl.go.jp/kaleido/entry/17/ ↩︎ - FAOはこれまでで最も詳細な海洋魚類資源の世界的評価を発表した。(FAO 2025)
tail/fao-releases-the-most-detailed-global-assessment-of-marine-fish-stocks-to-date/ ↩︎ - 魚介類に含まれる水銀について(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/suigin/ ↩︎






